ヌーラボ橋本さんに聞いてみた!
「ITパスポートの知識が広がれば世界の価値が高まる」

本コーナーは、IT界隈を牽引するリーダー、識者、著名人に「ITパスポート」について、資格取得の意義や試験の意義、その先にある価値に伺い、ITパスポートの本質に迫るインタビューコーナーです。

記念すべき第1回に登場するのは、2022年6月28日に東京証券取引所グロース市場への上場を果たした株式会社ヌーラボの代表取締役 橋本正徳さん。

ヌーラボと言えば、Backlogをはじめ、Cacoo、Typetalk、Nulab Passなど、企業の活動におけるコミュニケーションの質を高めるさまざまなツールの開発・提供をしている、福岡を代表するIT企業です。

橋本さんご自身がもともとエンジニアとして、プロダクト開発、さらにはコミュニティでの活動を積極的に行い、その後、経営者の視点でITを取り巻く環境を見てきた立場として、「ITパスポート」をどのように捉えたのか、迫ります。

(聞き手:馮富久(株式会社技術評論社))

橋本正徳さんプロフィール

1976年福岡県生まれ。福岡県立早良高等学校を卒業後上京し、飲食業に携わる。劇団主催や、クラブミュージックのライブ演奏なども経験。1998年、福岡に戻り、父親の家業である建築業に携わる。2001年、プログラマーに転身。2004年、福岡にて株式会社ヌーラボを設立し、代表取締役に就任。株式会社ヌーラボは、現在、チームのコラボレーションを促進するWebサービス Backlog、Cacoo、Typetalk、Nulab Passを開発・運営。また、福岡本社のほか東京、京都、シンガポール、ニューヨーク、アムステルダムに拠点を持ち、世界展開に向けてコツコツ積み上げ中。

エンジニアなら知っていてあたりまえの知識

Q:ITパスポートってご存知でしたか?

橋本

正直にお伝えすると、その名前は知っていましたが(このインタビューを実施するまで)資格試験の詳しい内容は知りませんでした。

調べてみたところ、今のヌーラボにとって、とくにエンジニアとしてはITパスポートが網羅する内容は知っていてあたりまえの知識、という印象を受けます。

また、今後、弊社が拡大していく中で、エンジニア職ではない立場の人にとっても、この知識を持っておいてもらいたいですね。そのために取得を推進するのは良いと感じています。

資格を取得することがゴールではなく、取得したものを実務に活用することが大事

Q:この10年を見ると、日本でもIT関連に向けた知識習得や教育の機会は格段に増えました。また、ITパスポートを筆頭に、国家試験資格への意識も高まり、受験者数が増えています。こうした、国家試験資格が増えること、また、その先の社会について、お考えをお聞かせください。

橋本

大前提として、資格試験は「試験」である、ということは強調しておきたいです。試験の知識がそのまま実務につながるかどうかは別ということです。ITパスポートで得た知識が、そのままIT関連の仕事に役立つかどうかは別ですし、他の試験の例でも、TOEICの点数と海外の方たちとの円滑なコミュニケーションが必ずしも比例しない、ということですね。

ただ、資格試験が無駄かというとそうではありません。今回のインタビューの対象となっているITパスポートが網羅している知識・情報は、今の日本社会において必須なものばかりですし、その需要はますます高まっていくと私は考えています。

たとえば、2020年初頭からのコロナ禍で、日本も一気にリモートワークが浸透し、多くの企業で採用することになりました。ただ、あまりにも突然で多くの企業ではさまざまなトラブルに直面した、と聞きます。実際、私たちの会社でも、少なからずありました。

その1つが、リモートワーク時における社員自身のPC・インターネット環境の整備です。コロナ禍前のように、出社を前提とした場合、企業の情報システム部門が、それらの環境整備を担当してくれるわけですが、リモートワークでは、社員一人ひとりがその役割も担います。

もし、PCの故障やインターネット接続のトラブルが起きたら……。そういうときに、ITパスポートが網羅している、知識体系を持っていることは非常に有用と感じます。テクノロジ系のソフトウェアやハードウェア、ネットワークなど、知識を持っていることで、トラブル時の原因究明、さらには解決につながる可能性は高くなるはずです。

また、一般的な生活だけではなく、私たちのような企業において、これからエンジニアを目指したい方には、ぜひテクノロジ系の知識は最低限のものとして習得し、これから生み出すツールやプロダクトの本質部分をしっかりと理解するための基礎的な素養は持っておいてほしいです。

インターネット社会において、円滑なコミュニケーションに役立つ知識

Q:今のお話だけでも、ITパスポートが扱う範囲は、日常的な生活に役立つこと、また、それだけではなく、専門的な職種の基礎的な知識としても重要と感じました。その他、社会に出て仕事をする立場になったとき、ITパスポートの扱う範囲で役立つと感じた部分はありますか?

橋本

繰り返しになりますが、あくまで基本的な知識としてで、実践的な部分は、別途、教育やOJTを含めたトレーニングが必要と考えます。

そのうえで、とくにITパスポートの3分野のうちのマネジメント系で取り上げられている「プロジェクトマネジメント」は、これから企業で働く人たちにとっては知っておいて損はない知識・情報ですね。とくに私たちが「コラボレーション」を中心においたツールやプロダクトの展開をしているから、というのもありますが、今、多くの企業で行っている事業は、自社内でのコミュニケーションはもちろんのこと、他社、さらにはユーザを含めたコミュニティとの連携が必須ですし、それらをプロジェクトとしてスムーズに遂行できるかどうかで、事業の成否に関わります。

とくに、インターネットを介してコミュニケーションしながらプロジェクトマネジメントをしていくことは、今が過渡期ですし、知識としては重要と私は考えます。

ITパスポートの知識が広がれば世界の価値が高まる

Q:最後に、橋本さんにとって、これからのIT社会の展望、その中でのITパスポートを含めたIT関連の知識の重要性について教えてください。

橋本

先ほどもお伝えしたプロジェクトマネジメントだけではなく、今はさまざまなシーンで過渡期だと感じています。

たとえば、最近のテレビは、昭和の時代のテレビではなく、スマートフォンやタブレットと同じカテゴリの製品(ハードウェア)としてのテレビに変わってきています。ネットワークにつなげられなければ利用できないですし、そのためには、アンテナケーブルと接続すること、ではなく、ネットワークへ接続する知識・スキルが必要です。

これはあくまで1つの例ですが、このように日常生活の中で、ITやインターネットに関わる部分が日に日に増えています。今後、これらは開発側の努力で、利用者がまったく意識しないで使える時代が来ると考えてはいますが、今はまだその時期ではないです。

「じゃあ、何が必要なのか」と考えると、こうしたIT・インターネットが浸透した社会では、社会に参加している人すべてが近い目線で対話し、活動できる状況だと、私は考えます。

今回のテーマであるITパスポートは、今現在、2022年の日本においては、その目線を合わせるための知識体系として、非常に有用で役立つはずです。

また、これらの知識体系が浸透することは、私たちIT企業にとっても非常に大事なことで、私たちが提供する多くのツールやプロダクト、さらにはサービスの価値への理解が高まり、結果、提供しているモノ・コトの価値の向上にもつながるからです。

ですから、私は「ITパスポートの知識が広がれば世界の価値が高まる」と考えています。

ありがとうございました。

株式会社ヌーラボについて

福岡を主拠点とし、日本国内では東京、京都、さらにアメリカ・ニューヨーク、オランダ・アムステルダム、シンガポールの計6つに拠点を置き、さらにリモートワークによって世界各地に従業員が在籍するIT企業です。

「“このチームで一緒に仕事できてよかった”を世界中に生み出していく。」をブランドメッセージとし、プロジェクト管理ツール「Backlog」、オンライン作図ツール「Cacoo」、ビジネスチャットツール「Typetalk」、組織の情報セキュリティ・ガバナンスを強化するセキュリティオプション「Nulab Pass」の開発・提供を行います。

2022年6月28日、東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

URL:
https://nulab.com/ja/

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