ROMとRAM、どうしてこうなった?

この記事には、試験対策としては紛らわしい、余計な内容が含まれています。これからITパスポート試験を受験しようと思っている方はご注意ください。いつの日にか「へー」と思いながら読み返していただけるとうれしいです。
どうしても試験対策に役立ててやろうという方は、重要用語にオレンジマーカーその他過去問に登場したことがある用語には黄色マーカーを引いてあります。ご参考になりましたら幸いです。
※なお、当時現役(もちろん今も)の皆さん(昭和世代(ry)がお読みになって、気になったところ、あるいは間違いなどを見つけましたら、twitterなどでこっそり教えてもらえるとうれしいです。 

MY SWEET MEMORIES

電源を落としても内容が消えないのが「ROM」、消えるのが「RAM」

懐かしい記憶だわ… そのように暗記していた時期が私にもありました。まるで対のように扱われるROMとRAMですが、冷静に英語の綴りを見てみると、「これ、対になってないよね?」と気がついてしまった方も多いと思います。

  • ROM:Read-Only Memory=読み出し専用メモリ
  • RAM:Random Access Memory=ランダムにアクセスできるメモリ

初期のパソコンでは、プログラムの発売や更新が頻繁ではなかったことや、RAMがとても高価だったため、固定的なプログラムをROMとして搭載している機種も多くありました。このあたりの時代から、内容は消えないけど読み出し専用のROM、消えるけど読み書きできるRAM、という認識が定着していったものと思われます。それぞれ掘り下げて見ていきましょう。

※1980~1990年代のお話し。当時のRAMの容量は1MB以下、補助記憶装置としてハードディスクもまだ普及しておらず、磁気テープやフロッピーディスクが主流の時代です。ちなみに、1984年に登場した初代MacintoshのRAMは128KBでした。画面は白黒でしたが、これでGUIを実現していたのはすごいですね。

ROMの場合

読み書きが可能かどうかを意味する用語としては、以下のものが存在しました。

  • ROM:Read-Only Memory
  • RWM:Read-Write Memory
  • RMM:Read-Mostly Memory
  • WOM:Write-Only Memory

ROMは読み出し専用という意味のわかりやすさと、大量生産されることが多かったこともあってか、用語として広く用いられました。子どもたちにとっても「ゲーム機のロムカセット」として、ロムは身近な用語でした。

これに対して、読み書きできるメモリというRWMの意味合いは、RAMのイメージに包含されてしまって、用語としては自然消滅していったものと思われます。

一番下のWOMというのはジョークとして生まれた用語です。書き込んだデータが読み出せないメモリ… そんなメモリは存在しません。データを破棄すれば同じことですし。

ちなみに、最近のスマートフォンのスペック表示では、メーカーや通信事業者によってデータの保存領域のことを「ROM」と表記している場合があります。これは、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM:電気によって書き換え可能なROM)から派生したフラッシュメモリを使用しているためです。フラッシュメモリは違和感なく書き換えができるので、ROMに分類しておくとややこしいことこの上なしです。

そこで、フラッシュメモリの基となったEEPROMのように、「書き換え可能だけど、書き込む際に制約があって、日常的に書き換えて利用するのが非現実的なメモリ」のことをRMMと呼ぶことがあります。ただし、海外では一定の認知度がありますが、日本ではほぼ聞きません。

※ROMはネットスラングとしても定着しています。この場合は「Read-Only Member」の意味で、SNSや掲示板などで自らは発言せず、人の書き込みを読むだけの人を意味します。この対義語としてのWOMは「Write-Only Member」の意味で、書き込むだけ書き込んで、その後のレスポンスには反応しない人のことを指します(こちらはほとんど使われません)。

RAMの場合

RAMはデータへのアクセス方法を示唆しています。

  • RAM:Random Access Memory
  • SAM:Sequential Access Memory

シーケンシャルというのは「順番に」という意味です。メモリ上の任意の場所に実用的な速度でデータを読み書きできるランダムアクセスに対して、連続した領域にまとめてデータを読み書きする使い方を想定しているのがシーケンシャルアクセスです。

パソコンのメインメモリの代名詞として、RAMは身近な用語として定着していきました。一方のSAMは、RAMの対比として便宜上作られた用語ではないかと思われます。実際にSAMという分類を自ら主張している技術は、検索した範囲では見当たりませんでした。

シーケンシャルアクセスを行う代表的な記憶媒体(ストレージ)としては、CD-ROMやDVD-ROMといった光学系メディア、磁気テープなどがありますが、これらをSAMと呼んで分類することもありません。

ところで電源の話はどこいった?

用語としてのROMとRAMが何を意味しているのか、見えてきましたね。それでは、今回の記事の出発点を振り返ってみましょう。

電源を落としても内容が消えないのが「ROM」、消えるのが「RAM」

あれれ? ここまで電源断で内容が消える/消えないという話しはなかったではありませんか。そう、電源によって内容が消える/消えないというのは、別の分類になります。

  • 揮発性メモリ(volatile memory)
  • 不揮発性メモリ(non-volatile memory)

これは額面どおり、電源の有無でデータが揮発する(消える)かどうかを意味します。そして、揮発性メモリの代表格がRAMで、不揮発性メモリの代表格がROMであったことから、いつの間にか用語本来の意味にこれらの意味も加味されて現在に至る、というのが現状かと思われます。

RAMが電気羊の夢を覚えている日がもうすぐ来る

読み出し専用のROM界に書き込み可能なフラッシュメモリが現れたように、RAM界では電源を落としても内容が消えない不揮発性RAMというものの開発が進められています。将来、これが普及していまのフラッシュメモリほどのコストで利用できるようになれば、コンピュータのすべての記憶装置を不揮発性のメモリで構成できる日がくるかもしれません。

20XX年、とある街角の居酒屋でおじさん(わたし)は遠い目をして語りだします。

おれの若ぇころはな、保存していないデータが消えるのは当たり前だったんだ。ひとつ作業をするたびにCtrl+sを押したもんさ。

そう遠くない未来に、実現したい光景ですね。
あの頃はDRAMだったと懐かしく、振り向く日があるのさ。

※不揮発性RAMの有望株とされているのがMRAM(Magnetoresistive RAM。磁気抵抗メモリ)です。磁気でデータを記憶するので電源を落としても消えません。そのうえ、動作速度は既存のDRAMよりも高速といわれています。省エネと性能向上の両面で楽しみな存在です。

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