「ITパスポートの採点方法がよくわからない」というお声を聞きます。基本的には「1000点満点中600点以上で合格」と単純明快……のはずですが、ネット上では「こういう採点結果だったのですが私は合格しているのでしょうか?」といった質問もよく見かけます。そこで今回は、ITパスポートの採点基準を深掘りしてみます。
最初にIPAのITパスポート試験の「試験内容・出題範囲」のページを確認しておくと、次のように記載されています。
・出題数:小問100問
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/range.html
・合格基準:総合評価点600点以上であり、かつ分野別評価点もそれぞれ300点以上であること
・採点方式:IRT(Item Response Theory:項目応答理論)に基づいて解答結果から評価点を算出します。
それでは、順番に見ていきましょう。
小問100問(そのうち採点されるのは92問)
ITパスポート試験の出題数は100問です。しかし、このうち8問はダミーで採点の対象外となっています。「試験内容・出題範囲」のページには、下記のように記載されています。
・総合評価は92問、分野別評価はストラテジ系32問、マネジメント系18問、テクノロジ系42問で行います。
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/range.html
・残りの8問は今後出題する問題を評価するために使われます。
「92問に対して6割以上をとる」ことを考えた場合、56問以上の正解が必要となります。ただし、どの問題がダミーなのかはわからない(試験後も公表されない)ため、最低でも56+8=64問は正解しておかないと安心できません。
総合評価点と分野別評価点
基本的には総合評価点600点以上で合格となりますが、それ以外に、分野別の評価点がすべて300点以上である必要があります。
分野別というのは、「ストラテジ」「マネジメント」「テクノロジ」の3分野で、それぞれを1000点満点で評価して300点以上、つまり3割以上を正解する必要があります。
この3割というラインは、ストラテジやマネジメントが弱点になりがちな学生には気になるポイントかもしれませんが、社会人なら気にせず臨みたいところです。分野別で必要な正解数の目安は下記のようになります。
- ストラテジ:35問中11問以上正解する(24問まで間違えてOK)
- マネジメント:20問中6問以上正解する(同14問)
- テクノロジ:45問中14問以上正解する(同31問)
※実際はIRT方式による採点なので、あくまで目安とお考えください。
例えば、ストラテジとテクノロジを全問正解しても、マネジメントで20問中5問しか正解できなかった場合、単純計算で総合800点以上を期待できそうですが、残念ながら不合格となる可能性大です。「苦手分野を捨てる」という勉強方針は命取りだということだけ、覚えておきましょう。
IRT方式による採点
ここが最大の謎の部分です。IRT方式というのは、解答結果に基づいて配点(評価点)を算出する方式ですが、その詳細がいっさい公表されていません。そこで、実際の試験結果をもとに検証してみます。ネットを検索したところ、ありがたいことにいろんな方の「試験結果レポート」がアップされています。これらを35件ほど集計させていただきました。
ちなみに、着色したセルの意味は以下のとおりです。
- 赤:600点未満(不合格)
- 青:今回の計算方法だと総合600点未満だが、結果として600点以上で合格されている方
- 無着色:文句なく合格
分野別評価点はどのように算出されているか
この点については、評価点の数字だけ眺めていても検証のしようがありません。確実に言えるのは、評価点は5点刻みで計算されているということだけです。
あとは予想というか妄想するしかありません。いちおう、IRT方式で一般に用いられている算出方法などを参考に考えてみたのが下記です。
- 累計の正答率から問題ごとに難易度を設定して、難易度の低い問題は低配点、高い問題は高配点とする
- 関連する複数の問題を束ねた配点、たとえば関連する3つの問題すべてに正解した場合を満点として、2問正解なら75%、1問しか正解できなかった場合は偶然として10%しか配点しない、といった配点
繰り返しますが、これは私の妄想です。あしからず。
総合評価点の算出方法
総合評価点は、分野別評価点から算出されているものとまず想定して、分野別評価点の単純平均(足して3で割る)と加重平均(スト32問、マネ18問、テク42問の重みをつける)の両方を算出して、総合評価点との「差」を比較してみました。この「差」は、何らかの調整を行っている点数と仮定します。
「差」の大きい順にソートしてありますが、加重平均のほうは点数の低い人がすべて上位に集まるという相関性が見えます。このため、おそらく実際の計算でも加重平均で計算されているのだろうと推測します。
仮説1:サービス加点の存在
点数が低い人ほど「差」が大きい(=加点が大きい)ので、合格ラインに達していない人(加重平均を計算した時点で600点未満の人)に対しては、サービス加点があるのかもしれません。いわゆる「下駄を履かせる」というやつですね。
また「差」がマイナスになるパターンは1例のみであることから、点数調整は基本的に加点方向のみと思われます(マイナスはレアケース?)。
仮説2:「問題セット」と点数調整の存在
今回、ITパスポート試験では「試験問題のセット」がいくつか用意されていて、それらがランダムに選択されて出題されている、という仮説を立てて、「問題セット」ごとに、過去の平均点などから難易度を数値化して、総合評価点を計算する際に得点の調整を行っているものと予想していました。
これを立証する意味で、「差」の数字がいくつかの固まりに分かれることを期待したのですが、結果は全体的に変化がなだらかで明確な線引きができませんでした。考えられる可能性としては…
- 問題セットが大量にある
- ほかの要因が複合的に絡む
- そもそもこの仮説が間違っている
なんらかの点数調整を行っているのは間違いないと思いますが、簡単に答えにはたどり着かせてもらえなさそうです。
結論。総合600点以上を目指してがんばりましょう
公式からなにも公表されていないので、結局ほとんどが妄想の産物なのですが、お楽しみいただけましたでしょうか。結果、まとめるとこんな感じです。
・「試験結果レポート」の総合評価点が600点以上であれば合格
・目安として、64問以上正解したい
・苦手分野を捨てる勉強方法は危険
・IRT対策は考えても無駄(しいて言えば、ラッキーで正解しても得点が伸びない可能性があるので、ちゃんと内容を理解して試験に臨みましょう、という当たり前のアドバイス)
みなさまのご武運をお祈りします。
※本記事は公開時(2022年8月時点)の試験方式をもとに作成しています。
※本記事の内容は情報提供を目的としています。掲載された情報の活用はご自身の責任によって行ってください。
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