ITパスポート試験は、「ストラテジ」「マネジメント」「テクノロジ」の3分野から問題が出題されます。
このうち、テクノロジについては、ITパスポートと名乗る試験ですから、「コンピュータ関連の技術のことだよね?」と容易に想像できるかと思います。
マネジメントについても、学生の方にはちょっとむずかしいかもしれませんが、社会人なら「組織とか製品をちゃんと管理しなさいって話しだよね?」と、ある程度ピンとくるかと思います。
では、ストラテジはどうでしょうか。社会人でも、日常であまり口に出したり耳に入れたりする言葉ではありません。ストラテジは、直訳すると「戦略」とか「全体的な計画」といった意味になります。日本語で言ってよ!とも思いますが、単に「戦略」と書くと戦うイメージが強いのでしょうか。今回は、そんなストラテジ分野から試験で何が問われるのかを見ていきたいと思います。
なんの戦略を問われるの?
ストラテジですが、ITパスポート試験のシラバスの目次を覗くと、以下のように分類されています。
- 大分類1:企業と法務
中分類1:企業活動
1:経営・組織論
2:業務分析・データ利活用
3:会計・財務
中分類2:法務
4:知的財産権
5:セキュリティ関連法規
6:労働関連・取引関連法規
7:その他の法律・ガイドライン・情報倫理
8:標準化関連 - 大分類2:経営戦略
中分類3:経営戦略マネジメント
9:経営戦略手法
10:マーケティング
11:ビジネス戦略と目標・評価
12:経営管理システム
中分類4:技術戦略マネジメント
13:技術開発戦略の立案・技術開発計画
中分類5:ビジネスインダストリ
14:ビジネスシステム
15:エンジニアリングシステム
16:e-ビジネス
17:IoTシステム・組込みシステム - 大分類3:システム戦略
中分類6:システム戦略
18:情報システム戦略
19:業務プロセス
20:ソリューションビジネス
21:システム活用促進・評価
中分類7:システム企画
22:システム化計画
23:要件定義
24:調達計画・実施
どうですか? 正直、物々しくてよくわかりませんよね。ざっくり言うと、「ITを前提とした現代社会で必要とされる、会社や情報システムについての基本知識」が問われるものと考えればよいかと思います。3つある大分類について、もう少し掘り下げてみましょう。
「大分類1:企業と法務」とは
3つの大分類の中では、いちばん身近に感じる内容かもしれません。会社というものについて、あらためて知識を問われるようなイメージです。
- 会社とはどういうものか
- 経営とは、誰がなにをしているのか
- 会社のお金の動き(会計)
- 会社が守るべき法律
などの観点から出題されます。
覚えておきたい頻出用語や紛らわしい用語
階層型組織,機能別組織,職能別組織,マトリックス組織,プロジェクト組織
事業部制,カンパニ制,持株会社
最高経営責任者(CEO),最高情報責任者(CIO),ステークホルダ
PDCA,BCP(事業継続計画),BCM(事業継続管理)
デジタルトランスフォーメーション(DX)
パレート図,特性要因図,PERT(アローダイアグラム),クリティカルパス分析,散布図
損益分岐点,貸借対照表,キャッシュフロー計算書,投資利益率(ROI)
オープンソースソフトウェア,サブスクリプション
著作権法,独占禁止法,PL法
請負契約,派遣契約,委任契約,雇用契約
「大分類2:経営戦略」とは
ITを活用した経営について、経営の基礎知識も交えて出題されます。ビジネスや商売のあり方を問われるイメージです。
- 経営とはなにか、どういう手法があるのか
- ビジネスや技術動向の予測、分析、立案、目標設定、評価
- 代表的な情報システムにはどのようなものがあるのか
などの観点から出題されます。
頻出用語や紛らわしい用語:
SWOT分析,PPM(Product Portfolio Management),3C分析
アライアンス,OEM(相手先ブランド製造),ファブレス
MBO(経営陣による自社買収),TOB(公開買付け)
4P・4C,プロダクトライフサイクル,ロングテール
リスティング広告(検索連動型広告),SEO(検索エンジン最適化),レコメンデーション
BSC(バランススコアカード),KGI(重要目標達成指標),KPI(重要業績評価指標)
バリューチェーンマネジメント,SCM(供給連鎖管理),ERP(企業資源計画)パッケージ
RFID(ICタグ),トレーサビリティ,CDN(Content Delivery Network),デジタルツイン
コンカレントエンジニアリング,JIT(ジャストインタイム),かんばん方式,リーン生産方式
クラウドソーシング,クラウドファンディング
フィンテック(FinTech),エスクローサービス
IoT,スマートファクトリー,ファームウェア
「大分類3:システム戦略」について
前段の経営戦略を経て、「新しいシステムが必要だ!」となった際に、システムを導入する段取りについての知識を問われます。
- 業務をどうやってシステムに落とし込むのか
- その際にどのような手法があるのか
- 全体的な流れ(システム化計画→要件定義→調達計画→実施)
などの観点から出題されます。
覚えておきたい頻出用語や紛らわしい用語
EA(Enterprise Architecture)
E-R図,DFD(Data Flow Diagram)
BYOD(Bring Your Own Device),M2M(Machine to Machine)
クラウドコンピューティング,SaaS,PaaS,IaaS,アウトソーシング,ホスティングサービス,ハウジングサービス,オンプレミス
要件定義,グリーン調達,情報提供依頼(RFI),提案依頼書(RFP)
ストラテジがあって、マネジメントやテクノロジがある
小規模なシステムだと、なし崩し的に導入されるようなこともありますが、大規模なシステムほど、計画的に企業の戦略(ストラテジ)に沿って導入されます。そうやって導入されて、実際に稼働しているITシステムの運用や管理に関する知識は、「マネジメント」で問われるわけです。
さらに、システムの技術面は「テクノロジ」で問われる…、と言いたいところですが、ITパスポートのテクノロジではそこまで細かい理解は求められません。基本的にはPCを利用するユーザー側として知っておきたい範囲ですので、ご安心を(開発側の知識は、基本情報技術者以降の試験で問われるようになります)。
戦略とは大局を見渡すものですが、ぼんやりとでもストラテジのイメージが湧きましたなら幸いです。
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